その日の俺はキていた。
まず朝眼を覚ますと、モーグリの奴までもが朝寝坊とかでものの見事に俺は遅刻をした。
約束をしていた場所に急いで駆けつけたものの、案の定そこには誰も居ない。お気楽そうなカップルが楽しげに談笑している、とても和やかな雰囲気の中、寝癖もろくに直さず立ち尽くす俺は、まるで見世物のようで格好悪かった。
更には急いで食べた朝食がどうやら悪くなっていたようで、唐突に腹部に激痛が走る。この世の終わりじゃないかと思うような激痛だ。
俺は苦悶した。店員に助けを求める視線を送る、しかしエプロンをしたミスラは俺の目が血走っているのを見てか怯えたように顔を逸らして逃げていった。
違う、違うんだ。弁解したかったが言葉が出ない。奥から腕っ節がいかにもよさそうなガルカが出てくる。ミスラの店員と同じエプロンをしている、詐欺だ。白い歯を輝かせたガルカが腕まくりをして俺に近づいてくる。だから違うんだ、俺は、俺はトイレを貸してくれといいたいだけなんだ。
聞いてくれ、頼む。ああダメだ腹が痛い。声が出ない、だからその拳を仕舞ってくれ頼む、俺の一緒のお願いだから!
……その後何が起きたのかは聞かないでくれ。
とにかく、今日の俺はとことんついていない。
しょぼくれてモグハウスへ戻る道中、今日の夕食を買おうと財布を取り出したら全財産がたった百ギルも無かったとか。
その現実に打ちのめされていたら、後ろから歩いてきた奴にぶつかられて虎の子の百ギルが溝に落ちたとか。
挙句ぶつかってきた奴に絡まれて慰謝料を請求されたとか。
不貞腐れてモグハウスに戻ったら、今日の不運の発端であるモーグリが人のベッドでのうのうと寝転がっていやがった。たたき起こすと、実家に帰らせてもらいます、手土産寄越せとか言いやがる。
そんな金が何処に在る、とっとと実家なりに帰りやがれー! と窓から奴を投げ捨てた丁度その時、ドアがノックされる。
「はいは〜い?」
何事も無かったかのように返事をすると、恐る恐る声が返ってくる。なんて事はない、同じシェルに所属する仲間だ。
「これからみんなで、プロミヴォンまで遊びに行こうと思うんだけど、一緒にいかない?」
なんて嬉しい誘いなんだろう。今日一日の予定をフイにしたばかりの俺にとっては願ったり叶ったり、の申し出だ。断る理由は無い。即オッケーを出す。
ぞわっ、とその瞬間俺の背中に悪寒が走った。なんだ? 首を傾げ背後を振り返る。窓から投げ捨てたばかりのモーグリがいる。貴様、戻ってくるのが速すぎだ。
「良かったー、あとひとりだったんだ。じゃあ、誘うね?」
ドアの向こうではそうと知らぬ彼女がホッとした声を出す。俺はモーグリと格闘しながら、彼女から誘いを受けてパーティーに入った。見知った名前が目に入る。
「あの……」
モーグリの口を横に引っ張りながら、俺は先程の悪寒、そして今日の朝からの出来事を一通り、思い返した。
「どうしたの? Uminさん」
「いや、あの」
まさか今更、快諾した冒険を断るわけにはいかない。しかし、俺は今日一番のいやな予感に晒されていた。逃げろ、と本能が告げている。
「お〜、Uminもいくのか〜」
わなわなと拳が震えている。モーグリの顔が二倍に膨れ上がっている。
お気楽な声が聞こえてきた。まさか、そんなわけがない、きっと違う今回は大丈夫。そう自分に言い聞かせても予感は消えない。益々色濃く俺の前に広がっていく。
Noco。俺の人生をとことん狂わせる魔性の男。死神の二つ名を持つ、しかも何故か俺に限定して発揮される奴の能力ほど俺にとって恐ろしいものはない。
助けて、殺される!
モグハウス内部に、俺とモーグリの悲鳴がほぼ同時に響き渡った。
作・文・構成・時代考証:らとな
転載・改行・天才:Umin某所で仕事帰り10分前に暇つぶしで書きなぐったそうだが、そのあまりの完成度の高さにぜひ転載を依頼したらOKもらえましたので公開。
らとな先生談話
「普段から別にこういうの書いてるわけじゃない。暇だったんだ。
(Uminさんいいとこひとつもありませんね という問いに)
この人に良いとこがひとつでも必要なのだろうか」
- 2006/09/07(木) 15:42:33|
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