「虚ろ」。
腕利きの冒険者達が次々と不思議な少年に導かれ、たどりついた夢の中のような場所。
ジュノを初めとした各国の重鎮達もこの奇妙な場所に興味を示し、直々に調査を世界中の冒険者にむけ通達したのは記憶に新しい。
まだまだ解明されていない謎も多く、毎日のように冒険者が出入りしている。
”残滓”と呼ばれる素材も数多くある謎のうちのひとつだ。
ここのモンスターから稀に採取されるこの素材は、各国の錬金術師を虜にした。
なんでも感情や記憶などを閉じ込めた貴重な素材だとか。
自分も多少錬金術の心得はあるものの、未だにこれが何なのか分からない。アジマは相変わらず咳き込んでるだけで何も教えてはくれないし。まあそこまでして知りたいとも思わないし、知ったとこでオレの人生には何ら影響を与えることはないだろう。正直どうでもいい。
しかしこれが金になるってんなら話は別だ。
こんなものに数百万ギルも出せるってんだから、全く金持ちってのは訳が分からない。
訳は分からないが金になるというだけでオレがここに来る理由としては十分過ぎる。
今日も一攫千金を夢見て、調査という名目の生活費稼ぎに来たわけだ。
だがオレの目は「虚ろ」以上に虚ろだ。
何しろここしばらくロクなものを食べていない。最後にクチにしたものといえばうちのハウスの管理モグが作った「オニオンスープ」だ。
そう、今日のツいていない一日の始まりを作ったあの呪われたスープ。
なにしろオレが傷んでいたから捨てたワイルドオニオンをわざわざゴミ箱から戻して調理したらしいからな・・。
確かに他にめぼしい材料がないというか正しくは買えないから材料がないわけだが、どうみてもあんなに傷んでるのを調理に使おうというその考えがオレには理解し難かった。というよりもゴミ箱から戻してる時点で狂っている。
思い出したらまた腹が立ってきた。帰ったらやはりもう一発殴っておこう。
「ウミンさん、そろそろ行くヨ?」
肩をポンと叩こうとするミスラのセラエノ。しかしすぐに突き出しかけた手を引っ込める。
ノコが擦り付けたあの黒くて生暖かいものがまだ憑いていた様だ。
「プ・・クク・・とってあげるネ・・・」
笑いを堪えきれないまま、パピルスごしにそっとそれをつかみ捨てた。
オレははーっと一息ため息を漏らし、無駄とはわかりつつもこの黒くて生暖かいものを擦り付けた張本人を睨む。
目が合った。キョトンとするノコ。
「どうした?オラの顔があまりにも美し過ぎて魅入ってしまったのか?」
「どこをどういう風に捉えればそんな回答が出て来るんだよ!」
自分の顔が見る見る真っ赤になるのが分かる。
「まあそうカッカするな。これやるから。」
と言うと、ノコは自分のカバンをまさぐり一枚の”せんべい”を差し出した。
ひんがしの国より伝わったとされる米をすりつぶし練ったものを網で焼いてつくるお菓子だ。
その独特の製法から、合成する人はあまりいないため出回ってる絶対数は少ない。
こんな珍しいものをよこすとは・・・。こいつ本気で仲直りしようとしてるのか・・?
「いいのか?結構珍しいぞこれ。」
「オラはもう食べたし。うちのギルドのマニアック料理人が冗談で作ったらできた品で余ったからもらったものなんだ。どうせウミンはお腹空かしてるんだろう?それでも食って少しは腹ごしらえするといいぞ。」
ありがたい、本当にお腹が空いた・・・。今にも倒れそうだった。
ここはひとつ休戦ということで好意に甘んじることにしよう。
「んじゃ遠慮なく・・」
そうしてノコの手よりせんべいを受け取り、すぐさま口に放り込んだ。
・・・・・・・・・・。
「※☆?φΗЩゞk%!!!?!?!??」
言葉にならない刺激が口の中を襲う!
辛い!!というよりも痛い!!なにこれ!!??
口の中に広がる激痛に身を悶える!涙が止まらない!
とてつもない痛みが全身の毛という毛を逆立たせた!
(とにかく水を!!)
必死で身振り手振りで水を要求する!
しかしノコを初めとして来ていたメンバー全員、腹を抱えて大笑いをしているばかりで全く水をくれる様子もない。
それでも必死になって水を要求するジェスチャー。
かわいそうに思ったのかようやくエルヴァーンの赤魔道士シスが水筒を差し出す。
奪うように受け取った水筒のフタを乱暴に開け、一気に口の中へ流し込む!
・・・・・・・・・・。
「ブバッハァアア!!!!」
そしてその勢いのままに飲んだ液体をそのまま噴射した。
「こ、これ・・やうーととりんく(ヤグートドリンク)ひゃないか!!」
シスの渡した水筒の中身はヤグードドリンクだった。
そう、「酒」である。
爆笑のトーンがさらに一段階上がった。セラエノに至っては地面に寝転がって足をバタバタさせている。
「こ、ここまでウマくいくとは思わなかったヨ!ひーーひーーー!」
「あははははははは!セ、セラさん何いれたんですか!?」
涙を流し腹を抱えながらタルタル詩人のサララが問う。
「カザムからしだけじゃ面白くないから、ハバネロを入れてみたんだヨ!」
これ「せんべい」じゃなくて「からしせんべい」かよ!!
つかノコのギルドじゃなくてセラさんの仕業かよ!!グルか!!!
最初から全て計算ずくだったのか!!
考えただけでもハラワタが煮えくり返る。もう許せない。
からしの辛さで流れる涙をふき取り、腰につけたナックルを握り締めたその刹那。
オレは言い様の無い殺気に気づいた。
「・・・・・・・・・・・?」
恐ろしい殺気をたどり横をそっと見るとその先にいたのは、卸したての銘入りガリシュチュニックにウミン印のヤグードドリンクを見事に浴び、滴る水を無言でふき取っていたタルタル赤魔道士ラトナだった。
「・・・・・覚悟はできてるな?」
「い、いやオレは何も・・!」
全てを言い切る前に連続魔を発動させたラトナ!
「死をもって償え!!!!!!」
鬼の形相で次々と詠唱を繰り出すラトナ。
ストーン2の大きな岩を顔面にもらい、エアロで胴着を切り刻まれ、ファイアは衣服に残っていたヤグードドリンクに引火してモンクなのにブレイズスパイク状態に!
「ギャーーーーー!!!!!」
「わわわわ、ちょっとタンマタンマ!!!」
慌てて止めに入るメンバー。怒りに我を忘れているラトナを無理やり押さえつけてなんとか詠唱を止めさせた。
「熱い!!熱い!!死んでまう!!」
精霊はやんだものの、胴着に引火した火を消し止めれないため必死に走り回る!
「ちょっと!誰か!!火消してあげて!!」
シスが叫ぶやいなや、全身にすさまじい水の濁流を受けて激痛が走る!
その勢いのままオレは地面に突っ伏した。
「ブバッ・・!!!」
視界が揺れる。頭がガンガンする。体中火傷と擦り傷で、顔は見事に腫れあがっていた。
意識が途切れそうだ。しかし頭を振る。
(い、今のウォーター2唱えたの誰だよ・・・。)
朦朧とする意識を振り絞り目をこらしてみると、そこには今しがた詠唱を終えたばかりのノコの姿があった。
「あ、ウォーターと間違えた。」
このまま死んだほうが楽かもしれない。
そう思いながら意識を失ったウミンだった。
作:Umin
原案協力:らとないつ出発するの?とか言わないでこのあとどうしようかホントに困ってますorz
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- 2006/09/23(土) 17:27:07|
- デスノーコ|
-
トラックバック:1|
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コメント:7
うーむ こう見ると・・・ペットのほうがおもろい記事かきそうなきが・・・・・
- 2006/09/26(火) 04:58:37 |
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- 虎介 #-
- [ 編集]
■司さん
よし、表出て歯食いしばれ^^
■ナナシさん
よし、校舎裏にきて歯食いしばれ^^
■Nの字さん
作者が不治の病のためにこのまま連載終了の可能性もなきにしもあらず!!
てか週刊とか無理!!!!!!
死んでまう!!
■AAAさん
焦らすというより、思い浮かばなかったといった方が正しいか・・orz
次の展開がまるで頭に浮かびませんボスケテ!!
■虎介さん
ボクも最近それ感じてきました・・。
- 2006/09/29(金) 18:45:22 |
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- Umin #-
- [ 編集]
えー。バトンです。予想外にれちさんからきたのは■e<想定外【説明】 *回ってきた5文字を携帯の記憶している変換機能で 一文字ずつ変換。 *その変換候補に出ている上位5つを惜しげもなくさらす! *そして次に回す人に新たな5文字を指定する。 ...
- 2006/09/24(日) 20:28:33 |
- FF日記かもかも